妙見石原荘
鹿児島県妙見温泉天隆川渓流沿いの宿 妙見石原荘
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2008年大河ドラマ「篤姫」を皆様に知っていただきたく、若女将が特別にご用意いたしました。

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足をのばせば
妙見石原荘がおすすめする場所をご案内します。
少し足をのばして旅の思い出作りに役立ててください。
林田勝彦さんが書いた こころの休日、スローな旅
 
懐かしい時間へ走る黒列車
はやとの風
 
はやとの風
はやとの風 はやとの風
はやとの風 はやとの風
はやとの風は鹿児島中央駅〜吉松を1日2往復。黒いボディに金のエンブレムを光らせて、鹿児島の温泉地帯を駆ける観光特急だ。

 9時27分、はやとの風2号がホームを滑り出す。爽やかな走りっぷりは、古代この山野を舞台に活躍した隼人族のイメージと重なり合う。磯のトンネルを抜けると桜島が見えてきた。
見慣れた景色も、列車の窓からゆっくり眺めるとまた新鮮。
国道よりさらに海側に線路があり、目の位置も高くなるからだろうが、山の稜線そのものまで普段より美しく見えるから不思議だ。
後日、ある人にこの話をすると、“自分が乗った時は、みんなが窓側に集まってきて、列車がひっくり返らないかとヒヤヒヤした”と言った。
多分、半分は本気だったにちがいない。
 車内はアットホームな雰囲気。さあ、列車の旅を楽しむぞ、と誰もがどこかで童心に帰っているからだろう。
木目を生かした室内は天窓から明るい光が降り注ぎ、さまざまな旅の話が聴こえてくる。
9時18分鹿児島中央駅着の新幹線から乗り継いだと言う人や、この春から鹿児島の大学に入った息子に会いに来て、今日は一回りと言う人。
その一人ひとりに、つばめレディがにこやかに受け答えしている(豪華なことに、はやとの風には新幹線のつばめレディも乗務しているのだ)。
嘉例川行きの切符を見せると、「あの辺の温泉は泉質がいいですからね」と、とびきりのスマイルが返ってきた。

 車窓を流れる五月の新緑は、手をのばすとさわれそうなくらいだ。やがて10時18分、はやとの風は嘉例川に到着。
百年変らぬ風景、嘉例川駅
 
嘉例川駅
イメージ
 嘉例川駅は明治36年1月15日開業。木造の駅舎が山間に静かにたたずみ、百年の歴史を語りかけてくる。以前一、二度来たことがあったが、いつかは旅人としてこの駅に降り立ってみたいと思っていたものだ。公衆電話が見当たらず、携帯電話もここは圏外で使えないのだとか。こんな場所が残っていてもいいと思うのは、通り過ぎる者のわがままだろうか。

 妙見温泉方面へ行く温泉バスがやってくるのは10時32分。それまでの間は、百年間変らぬ風景と空気の中にひたってみようと思った。
無人の改札を出ると、大きな古木が日陰を作るかたわらに真新しい石碑が建っていた。「肥薩路に汽笛なるなり百周年」と刻まれている。

百年前、初めてこの駅に汽車がやってきた日、人々は歓声をあげて「最新の乗り物」を迎えたのだろうか。今は時折ホトトギスの声だけが聴こえてくる風景の中に、一瞬、羽織袴の人や打ち振られる日の丸の小旗の映像がモノクロームの幻のように瞼に浮かんだ。みんなどこへ行ったのだろう。
 駅舎の前の広場の隅に花壇があり、何種類もの小さな蝶が花の間で遊んでいる。半月程前に来た時は、紫の菖蒲が雨の中に咲いていたのだが、季節だけは動いていくものらしい。それにしても、小さな蝶が舞う姿を見ると幼い日を思い出してしまうのはなぜだろう。

 この駅では待つことがまるで苦にならない。駅の前の民家では七十歳過ぎの男性が花の手入れをしていた。昔の話を聞かせてもらっているうちに、温泉バスがやってきた。
温泉バス
 天降川沿いのつづら折れの道を、バスはゆっくりと下っていく。「この辺は、新緑の今頃がいちばんきれいですよ」と運転手さんが言った。今あらためて思うのだが、今度の短い旅で出会った人たちはみな親切だった。それはきっと自分のいる場所を愛し、自分の役割に誇りを持っているから、いろんなことをよく知っており、話す言葉に温かみが出てくるためなのだろう。
源泉100%を守る人たち
 
温泉
キセキレイ キセキレイ
温泉 湯守りの今西さん
 嘉例川駅から10分もすると、バスは妙見石原荘の前に着く。降りる時、「夕方のはやとの風に乗るのなら、帰りもここで3時頃待っていて」と運転手さんが言い残して、バスはまた渓谷の道を下って行った。

 石原荘のその日の昼食は籠会席が用意されるとのこと。天降川で捕れた 天然の鮎を香ばしく焼き、川沿いの蓼の葉で作った蓼酢をかけて食べる鮎は この宿の名物の一つだ。その時間まで、しばらく散歩することにした。

 妙見のこの辺りは、川も雑木林も数え切れないほど多くの生き物たちの棲み家だ。とうとうと流れる瀬音の中から悠然と姿を現す大きな鳥影はシラサギ。川の中の岩にとまり、尾で叩いているのはキセキレイ。そして四季の花木。六月の雨に煙るネムノキの花ももうすぐだ。
 天降川に合流する中津川上流に行くと、川の中で温泉がぶくぶくと自然湧出しており、妙見温泉の原点を見る思いがする。自然の中に湯量豊富な温泉が自噴するという天の配剤に恵まれて、石原荘では毎分300リットルの温泉が浴場にあふれ、かけ流しされている。源泉の温度は56℃で、途中で空気に触れることなく山水との熱交換で、薄めずに熱エネルギーだけを奪い、42℃の適温に整えて湯口で開放する。源泉100%へのこだわりが、こうして守られている。

 湯の色は黄金色に澄み、霊峰霧島山系の温泉の恵みをたたえている。薄絹のうような湯煙のカーテンを透かして、太い杉の古木の林を染める光を眺めながら湯につつまれていると、心も時間も温かくほどけていくようだ。

 天降殿と呼ばれる浴場棟の裏庭に回ると、湯守りの今西さんが木に名札をつけていた。椋の木、エゴの木、スモモ、ドングリ、シロダモ…。ここには80種類もの木が自生していると言う。「こうしておくと、お客さまも木の名前をおぼえてくださるでしょう」と今西さんが笑った。そういえば、石原荘には大きな椋の木が屋根のように枝を広げる露天の川風呂もある。
湯上りの「温楽」
 
湯上りラウンジ ラウンジ
ラウンジ
 湯上りラウンジ「天の原」の片隅に一台の古い蓄音機がある。手入れの行き届いた木製のキャビネットも懐かしいが、実は立派に現役の蓄音機なのだ。聴こえてきたのは「子どもの情景」というショパンのピアノ曲。その時「あ、ショパンですね」と私がさりげなく呟いたわけでは全然なく、ラウンジのカフェの責任者である石原麻貴さんにすべて教わったもの。レコード盤を乗せ、ハンドルを回してから針を落とす手間暇が優雅というか、いいんだなぁ。温かな音が体に柔らかく染みてくる。

 ラウンジでは、手づくり焙煎した豆を独自にブレンドしたコーヒーも味わえる。串木野のパティシェから毎日取り寄せる手作りケーキとのセットメニューは常連客に好評で、このカフェのためだけに立ち寄る人も多いという。
雑木林に面したテラスの椅子に座って、ぽつんと咲いたヤマボウシの花を眺めていると、川とんぼの一種だろうか、黒いとんぼがやってきた。木立に浮かぶ白い星のような花。緑の葉にとまった、とんぼの黒い羽根、青い糸のような胴体。とんぼが再び飛び去るまでの間、自然の中に生まれた一瞬の配色の鮮やかさ。

 石原荘の前の停留所で、帰りの温泉バスを待つ。木のベンチが置いてあり、土手の草むらにはドクダミが咲いていた。名前のイメージとは裏腹に、可憐な姿をした植物だ。
バスは時間通りにやって来た。これに乗り、嘉例川駅に行くと3時31分の鹿児島中央駅行きの「はやとの風」にゆっくり間に合う。

 鹿児島が近づくと、車窓の向こうで桜島が出迎えてくれた。傾きかけた陽の中で淡いピンクに染まっている。青々とした朝の色からこの静かな風景に変るまで、いつのまにか時間が流れていたことに、その時やっと気がついた。

 短くとも、いくつもの貴重なものたちに会えた旅がもうすぐ終わる。

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妙見石原荘 〒899-5113 鹿児島県霧島市隼人町嘉例川4376番地 TEL:0995−77−2111 FAX:0995−77-2842

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